ED治療薬と筋・骨格系の副作用
ED(勃起不全)治療薬であるバイアグラ(シルデナフィル)、レビトラ(バルデナフィル)、シアリス(タダラフィル)の副作用に関節痛・筋肉痛があります。
薬剤の添付文章上、筋・骨格系の副作用発生頻度はバイアグラ、レビトラでは1.0%未満とされており、頭痛や顔のほてり等の有名な副作用と比べると非常に稀な副作用です。
しかしシアリスに関しては、外国で実施されたプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(13試験)において、2.5mg~20mg群に割り付けられた総症例2,047例中で、背部痛63例(3.1%)、筋痛57例(2.8%)、四肢痛34例(1.7%)と報告されています。決して多い副作用ではないものの、バイアグラやレビトラと比べるとシアリスは比較的高い頻度で筋・骨格系の副作用が認められますので注意が必要です。
シアリスと筋肉痛
シアリスと高脂血症治療薬のリポバス(シンバスタチン)を併用したところ、 筋肉痛を発症した症例も報告されています。
Myopathy with Concurrent Tadalafil and Simvastatin. Case Report in Medicine 2009;2009:378287
シンバスタチンを20mg/日を8日間服用していた48歳の男性がシアリスを服用したところ、服用後約3時間で下肢を主体とする筋肉痛が出現、筋力低下も認めその後症状は増悪しました。また、5日間勃起が持続したそうです。シアリスとシンバスタチンの相互作用による薬剤性の筋肉痛が疑われたため服用を中断したところ、 5日後には著名な改善を認めました。
シンバスタチンもシアリスと同様、筋肉系の副作用を起こす可能性があることが知られています。この症例で筋肉痛を起こした正確な理由は不明ですが、肝臓にある薬の代謝に関係する代謝酵素の働きがシアリスとシンバスタチンの併用で阻害され、薬の副作用が増強した可能性があります。実際、シンバスタチンと同じ高脂血症治療薬であるロバスタチンとシアリスを併用すると、 筋肉痛を発症する確率が高まる可能性がある、という報告もあります。
ED治療薬を処方する医師はまれな副作用にも注意が必要
シアリスはバイアグラ・レビトラと比べると半減期(薬の全体量が半分になるまでの時間)が11時間半~17時間と非常に長いため、長時間にわたって安定したED改善効果が期待できる薬剤です。しかし長時間作用するぶん、他の2剤と比べて思わぬ副作用が出現する可能性もございます。筋・骨格系の副作用はバイアグラ、レビトラ、シアリスともに決して頻度の高い副作用ではありませんが、可能性としてはゼロではないということを処方する医師は認識しておく必要があります。