今回は「ザガーロとPSA」についてお話ししたいと思います。PSAはザガーロを服用していると1/2の数値となって、正しい値が出ません。PSA検査をするときには必ず医師や問診票に服用している事を伝えるようにしましょう。
PSAとは
PSAとは、英語のProstate Specific Antigen(前立腺特異抗原)の略で、前立腺から精液中に分泌される、タンパク質の一つです。
受精に欠かせない物質ともいわれ、血中にも流れ出ています。
健康な方でおよそ2ng/mL以下、加齢とともに増加していき50歳くらいで4ng/mL以下が標準値とされています。
しかし病気などで前立腺に異常があった場合、血中の濃度が濃くなります。
その他の臓器の異常では数値は変わらず、特異的に前立腺の異常にのみ反応することから、今日では前立腺癌などの腫瘍マーカーとして使われています。
前立腺癌は初期の自覚症状がほとんどなく、気づいたときにはかなり進行していることも多く、その場合は完治は困難です。
しかし他の癌と同様に初期段階で適切な治療を行えば完治することも可能です。
このPSA検査が普及してからは早期の発見が可能になり、PSA検査導入前は癌が他の場所に転移してから見つかるのが60%だったことに対し、導入後は約10%にまで低下しました。
皆さんの中にも健康ドックなどでPSA検査をされたことのある方がいらっしゃるのではないのでしょうか。
PSA数値が上がる要因
前立腺から分泌され血中にも流れるPSAですがその数値を指標に病気の有無の可能性を検知できるようになったと前項で説明しました。
前立腺癌の他にも以下の場合、数値が高くなることが知られておりますので記述します。
前立腺肥大症
名前の通り、前立腺が肥大する病気です。
50歳代より急速に増加し、組織学的な前立腺肥大は、30歳代から始まり、50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に見られます。
症状としては排尿障害や腎機能低下が見られます。
前立腺の炎症
細菌などに感染し、前立腺に炎症が起きている場合もPSA数値が高くなります。
外部刺激
手術などで前立腺が傷つけられたり、直腸診などで前立腺に力が加わった場合など、外部からの刺激を受けてもPSA数値は高くなります。
ザガーロとPSA
さて、今回AGA治療薬として厚生労働省により認可が承認されたザガーロですが、こちらには前身と言える(というか成分的に同じ)アボルブというお薬があります。
このアボルブは元々前立腺肥大症のお薬として開発されたもので成分はデュタステリドといいます。
しかしこのデュタステリド、AGAに対してプロペシアなどに代表されるフィナステリドと比べ、より強力に作用することがよく知られ、多くのAGA治療専門のクリニックで処方されていました。
そのアボルブをAGA治療薬として転用したのがザガーロなんですね。
さてアボルブやザガーロの有効成分であるデュタステリドですが、プロペシア等の有効成分であるフィナステリドと同じくPSAの数値を下げる効果があります。
服用後およそ6ヵ月で約半分まで数値が下がるという臨床結果も出ています。
ですので服用中の方でPSA検査を受けた場合、実際の数値より低い結果が出てしまい前立腺癌などの異常の発見が遅れる場合もあります。
もしザガーロなどを服用中の方で泌尿器科などでPSA検査を受けられる方は、主治医に服用中のお薬を伝えることをお忘れないようお気を付けください。
グラクソ・スミスクライン社の事情により発売が延期されていましたが、2016年5月26日にグラクソ・スミスクライン社よりザガーロが2016年6月13日販売開始の発表がされました。薬価(価格)は自由診療になりますが、都内最安値で処方できるように努力しております。
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